株式会社エコノミクス&ストラテジー

二部料金制による価格差別:自己選択メカニズム

はじめに

現代の市場では、利用頻度や支払意思が顧客ごとに大きく異なるため、従来の「一律定額」や「一律従量課金」だけでは収益機会を取りこぼしがちです。一般的に「購入頻度が高かったり購入数が多いヘビーユーザーと、ライトユーザーに異なるオプションを選ばせて価格差別を行うことができたら、全員に一律価格を提示するよりも利益を大きくすることができます。そこで企業は、固定料金+変動費という組み合わせで二つのプランを用意し、顧客自身に最適な方を選んでもらうことで、価格差別を実現し、利益を大きくすることができます。この記事では、なぜ顧客が「自分に合ったプラン」を自然に選ぶのか、そのメカニズムをわかりやすく解説します。


二部料金制の仕組み

二部料金制とは、サービス利用にあたって

  • 固定料金(利用権や会員権を得るための前払費用)
  • 変動費(実際の利用量に応じた従量課金)

の二要素を組み合わせた価格メニューを提示する方法です。販売オプションとして、「会員になれば1回あたりの単価が安くなるが、会員費がかかるプラン」と「会員費無料だが単価は高めの従量課金プラン」を並べておき、顧客に選んでもらいます。


なぜ自己選択が生まれるのか

以下の二つの消費者像を仮定します。

  • ライトユーザー
    利用頻度や利用量が少ない
  • ヘビーユーザー
    頻繁に、多量に利用し、一回あたりのコストをできるだけ下げたい層。

会員プラント、非会員プランを消費者に提示することで、ちょっとだけ利用したいライトユーザーは、会員費がかからず手軽な「従量プラン」を選択します。

  • 一方でヘビーユーザー は、もし変動費の高いプランを選ぶと利用量に応じてコストがかさんでしまうのに対し、固定費が適度で変動費が低いプランを選ぶことで一回あたりの支払いを大きく抑えられるため、結果的にトータルの支払額を少なくできる。したがって会員費を払い「会員プラン」を選ぶ傾向が強まります。

このように、プランの設計そのものが「自分はどちらを選ぶべきか」を顧客に自己選択するよう促します。


消費者余剰の取り込みと企業利潤

通常、利用量に応じて払いたい金額と実際に支払う金額には差があり、その差が顧客の「消費者余剰」となります。二部料金制では、

  1. 会員プランの変動費を限界コストに近づけて利用量を抑えずに維持し、
  2. 固定料金(会員費)でヘビーユーザーが得る余剰を前もって徴収する

ことで、企業は単一料金制よりも多くの余剰を取り込むことができるのです。


まとめ

固定料金と変動費を組み合わせた二部料金制は、顧客自身に最適なプランを選ばせることで、企業が消費者余剰を効率的に取り込む強力な価格戦略です。会員制などの販売手法は、カラオケ店などでもよくみられるものです。よく知られた理論なので簡単にしか説明しませんでしたが、この二部料金制による価格差別はさらに実装される余地があると言えるでしょう。

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