サプライヤーの新規参入を促して部品市場で価格競争を起こさせることで、調達コストを引き下げることができます。特に部品市場が1つの会社によって独占されている時には、新規サプライヤーの参入を促すことが重要です。
この記事では、サプライヤーに株をあえて売ることで、新規サプライヤーの参入を促し、調達コストを引き下げる戦略を提案します。
参入を踏みとどまる理由
一般的に潜在的な参入者が参入を踏みとどまる理由というのは、参入したときに既存企業が値下げ攻撃をしてくるという恐れからです。独占的なサプライヤーから部品を調達する企業としては、部品市場で参入を促すためにこの脅威をやわらげる必要があります。
ケース
ファストフード市場には、ケンタッキー(自社)とマクドナルドの2社がいて競争しているとします。部品市場(中間財)として、ペプシコ社がいてファストフード市場でのコーラ販売を独占しているとします。この時、ケンタッキーが自身の株の一部をペプシコに売ることで、インセンティブ構造を変化させ部品市場での新規参入を促すことができます。
部品市場への参入を考えているコカ・コーラ社が存在するとします。ケンタッキーとペプシコに資本関係が全くない時、コカ・コーラがもし参入したらペプシコは値下げ攻撃をするという脅しをかけることができます。値下げ攻撃を受けると利益は小さくなってしまうので、この脅威の存在により、コカ・コーラ社は参入を思いとどまるでしょう。結果として、ペプシコに独占価格を付けられて調達コストは高くなります。
一方、ペプシコがケンタッキーの株を一部持っている場合はどうでしょうか。非常に重要なのは、ケンタッキーのライバルのマクドナルドの存在です。コカ・コーラが参入したとき、ペプシコはマクドナルドに対する部品販売でもコカ・コーラと競争するわけですが、ペプシコはマクドナルドへのコーラ販売において価格競争に追随できにくくなります。というのも、マクドナルドに対するコーラ販売で価格競争を激しくしたら、最終財市場におけるマクドナルドのケンタッキーに対するコスト優位が相対的に強まり、ペプシコはケンタッキーからの資本収益を小さくしてしまうからです。このことを先読みして、潜在的参入者であるコカ・コーラは、参入しやすくなります。ペプシコによる値下げ攻撃の脅威が弱まると同時に、マクドナルドに対する販売で優位に立てるとコカ・コーラ社は予想するからです。つまりケンタッキーとしては、サプライヤーと資本関係を結ぶことで、部品市場における参入の余地を大きくすることができるのです。
部品市場に新規参入が起きると、競争で独占価格よりも価格が低くなるため、調達コストを低くすることができます。
まとめ
このように、サプライヤー企業のインセンティブ構造を操作することで、部品市場での参入を促進し、部品コストを引き下げられる場合があります。
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