株式会社エコノミクス&ストラテジー

顧客を”譲る”ことで得る独占利益:価格競争を避ける戦略的思考

参考論文

Brandenburger, A. M., & Nalebuff, B. J. (1996). Co-opetition. Currency Doubleday.

Anton, J. J., Biglaiser, G., & Vettas, N. (2014). Dynamic price competition with capacity constraints and a strategic buyer. International Economic Review, 55(3), 943–958.


はじめに

この記事では、ある商品の生産販売を巡って競争している各企業の生産能力に上限がある場合、価格競争を回避できるということを説明します。具体的には、ある期の需要を丸ごと競合他社に譲ってしまうことで、次の期の競合他社の余剰生産能力を小さくし、次の期に独占的な利益を得ることができるという戦略です。

生産能力の制限

ある商品を巡って2つA社とB社の会社が競争しているとします。2つの会社の商品は差別化されていない同質なものであるとします。各期の需要数を100とし、2社の生産可能数はそれぞれ100であるとします。生産には2期間かかるとします。

この時、A社(B社)は、1期目の需要について競合に譲ってしまうことで、2期目では価格競争をすることなく需要を独占することができます。というのも、1期目の需要をすべて抱えた企業は、2期目において余剰生産能力がなくなってしまうからです。ある期の需要を巡って価格競争するのではなくあえて相手に譲ってしまうことで、次の期の相手の余剰生産能力を埋めてしまい、次の期で半独占的利益を得ることができるのです。つまり、価格競争に追随せずに他社に顧客を誘導する(あえて他社より高い価格を付ける)ことで、のちに価格競争せずに独占的利益を得られる可能性があるということです。


まとめ

競争する会社としては、生産能力に制限があるとき、他社に顧客を譲ることで他社の生産キャパを小さくし次の期で半独占的利益を得る、といったような、交互に独占を繰り返していくコーディネーションをすることで、利益を大きくできます。目先の顧客を獲得するために価格競争を行うことは適切ではない場合があるのです。

一方で重要なのは、このコーディネーションについて直接的な話し合いで取り決めをすると、独占禁止法違反になってしまうということです。暗黙の了解で、このようなコーディネーションをするのが重要です。

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