参考論文
Chen, Y. (2001). On Vertical Mergers and Their Competitive Effects. RAND Journal of Economics, 32(4), 667–685
はじめに
販売収益と広告収益がある事業で、自社と競合が競争している場合を考えます。例えば雑誌事業です。雑誌では、実際に雑誌を販売することによる収益の他に、雑誌に広告を掲載できるようにして広告枠を販売することによる広告収益も得られます。この時、自社の広告枠を競合他社に販売することで、競合の値下げインセンティブを弱めて、価格競争を緩和することができます。
広告枠の販売
例えば、A社とB社は雑誌事業で競争しているとします。そしてB社は雑誌事業の他に、コンサル事業などを行っているとします。この時、A社は自社の雑誌の広告枠の一部をB社に販売し、A社の雑誌でB社のコンサル事業を広告するようにすることで、B社が雑誌価格を値下げする意欲を弱めることができます。
この論理は以下のように説明できます。仮にB社が雑誌を値下げしたとします。この時、B社は雑誌販売数を増やし、(A社雑誌から顧客を奪うため)確かに雑誌部門の収益を増やすことができます。しかし同時に、A社の雑誌販売数が減ることにより、A社の雑誌の広告を通じて得られるはずだったコンサル事業の顧客が減ってしまうという負の作用が発生します。この作用の存在により、B社の値下げインセンティブが弱くなり、A社の雑誌にB社コンサル事業の広告が出されていない時と比べて、価格競争が緩和されるのです。
A社としては、競合であるB社に対して割安でもよいので広告枠を販売することで、価格競争を緩和し利益を得られる可能性があります。
「言い換えると、もし敵が自分に攻撃してきたら敵自身も自動的にダメージを食らってしまう」というような構図を作り出し、敵の攻撃を防止することができるということです。
競争しているライバルの、販促活動をサポートするというのは不自然に感じられるかもしれません。ですが、重要なのは、ライバルの利益を小さくすることではなく、自身の利益を大きくすることです。敵の懐に入ることで、値下げ競争を予防して利益を得られる可能性があるのです。自分とライバルの利益の合計が常に一定であるゼロサム的に考えるのではなく、パイを大きくすることを考えるべきです。
まとめ
競合他社に広告枠を販売し、競合がその広告に依存するように仕向けることによって、競合の値下げインセンティブを小さくし、価格競争を緩和できる可能性があります。敵にとって、攻撃が自身の首を絞めるような構図を作り出すことが、価格競争緩和のためには重要です。
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