株式会社エコノミクス&ストラテジー

競合他社の小売店での販売と価格競争

参考論文

Chen, Y. (2001). On Vertical Mergers and Their Competitive Effects. RAND Journal of Economics, 32(4), 667–685


はじめに

ある商品の生産をめぐって競争するA社とB社があるとします。B社は、販売小売業も行っているとします。この時、A社は自身の商品をB社の小売店で売ってもらうようにすることで、B社の価格値下げインセンティブを少なくすることができます。競合他社が販売小売業をしている場合、自社商品がその小売店で販売されるようにすることで、競合他社の値下げインセンティブを下げて、価格競争を緩和できます。


ケース

例として、セブンイレブンと日清の2社を考えます。分かりやすい企業の例として、この2社を取り上げているだけで、実際に日清が以下のような論理で戦略を立てているという事実関係はありません。
セブンイレブンは、小売業の他に、小売で販売する商品を一部内製化するというPB事業(プライベートブランド)を行っており、その中の一つにカップラーメン事業もあります。つまり、カップラーメン市場を巡って、セブンイレブンと日清は競合関係にあるのです。

(セブンイレブンのPBカップラーメン)


この記事で説明する戦略とは、日清はセブンイレブン店舗に自社のカップヌードルを販売してもらうことで、セブンイレブンがPBカップラーメンを値下げするインセンティブを弱めることができるというものです。
仮に、セブンイレブンがPBカップラーメンを値下げしたとします。この時、日清カップヌードルから顧客を奪えるため、カップラーメン事業の利益を増やすことができます。しかし、日清のカップヌードルの売上が減ることで、セブンイレブンが日清カップヌードル販売から得られたはずの、小売マージン収益が減ってしまうという負の作用も発生します。この作用により、セブンイレブン店舗で日清カップヌードルが売られていない場合と比べて、セブンイレブンのPBカップラーメンの値下げ意欲が弱くなり、価格競争が緩和されるのです。つまり、日清は、競合であるセブンイレブンの店舗でカップヌードルを販売することで、価格競争を緩和させて利益を大きくできる可能性があります。


まとめ

敵の懐に入ることで、「もし敵が自分に攻撃してきたら敵自身も自動的にダメージを食らってしまう」というような構図を作り出し、敵の攻撃を防止することができます。競合他社が販売小売業をしている場合、自社商品がその小売店で販売されるようにすることで、競合他社の値下げインセンティブを下げて、価格競争を緩和できるかもしれません。重要なのは、競合他社の利益を減らすことではなく、自社の利益を増やすことなのです。

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