参考論文
Chen, Y. (2001). On Vertical Mergers and Their Competitive Effects. RAND Journal of Economics, 32(4), 667–685
はじめに
自社と競合他社が、ある最終財市場で競争しているとします。もし競合他社が、その最終財の部品も製造している場合(川上統合している場合)、自社としてはその競合他社から部品を一部仕入れることで、競合他社の値下げインセンティブを小さくして、価格競争を緩和できるということを説明します。
ケース
単純化のために、スマホ市場で争うAppleとサムスンを例に考えます。両社は、スマホという最終財市場でシェアを競い合っています。同時にサムスンは、スマホの部品である液晶パネルも製造しています。サムスンが川上統合しているということもできます。この時、Appleは自社のiphoneの製造用に、サムスンの液晶パネルを購入することで、サムスンのスマホであるアンドロインドの値下げを防ぐことができます。
もしサムスンがアンドロインドを値下げした場合、確かにスマホ市場においてはサムスンの利益は増えます。ですがそれに伴うIphoneの売上数減少(値下げしたアンドロイドに奪われる)により、Appleから需要される液晶パネル注文数が減ってしまいます。つまりサムスンにとしては、アンドロイドをもし値下げしたら、液晶パネル外販収益の減少という形で、会社の利益の一部が減ってしまう負の作用が発生するようになるのです。この作用により、Appleがサムスンから液晶パネルを仕入れない場合と比べて、サムスンの値下げインセンティブは小さくなります。
つまり、Appleとしては、スマホ市場のライバルであるサムスンから、その部品である液晶パネルを購入することによって、スマホ市場での価格競争を和らげることができるのです。サムスンは、競合であるAppleにパネルを高く売ろうしてくるかもしれませんが、Appleはたとえ割高であってもサムスンから液晶パネルを購入したほうが、価格競争が緩和できて利益が高くなる場合があります。
Appleとしては、敵の懐に入ることで、「もし敵が自分に攻撃してきたら敵自身も自動的にダメージを食らってしまう」というような構図を作り出し、敵の攻撃を防止することができるのです。
まとめ
競合他社から部品を一部仕入れることで、競合他社の値下げインセンティブを小さくして、価格競争を緩和できます。この戦略は、ライバルのインセンティブ構造を操作し内生化することで、ライバルの攻撃を予防する戦略と言うことができるでしょう。この戦略はライバルの利益を大きくすることになるので、違和感を持たれるかもしれません。ですが重要なのは、ライバルの利益を減らすことではなく、自分の利益を増やすことです。ライバルと自分の利益の合計が一定であるというようなゼロサム的に考えるのではなく、パイを増やしていくようなメカニズム設計をすることが重要です。
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