参考論文
Chioveanu, I., & Zhou, J. (2013). Price competition with consumer confusion. Management Science, 59(11), 2450–2469.
はじめに
価格競争は、企業にとって避けて通れない課題のひとつです。しかし、同じような商品を扱っている市場であっても、すべての企業が過酷な値下げ合戦に巻き込まれる必要はありません。重要なのは「価格そのもの」ではなく、「価格の見せ方(フレーミング)」です。
この記事では、**Chioveanu & Zhou(2013)**の理論研究に基づき、消費者の混乱を利用して価格競争を緩和する戦略について紹介します。
価格フレームとは
価格フレームとは、価格情報の提示方法のことを指します。
例えば、
- 「税込価格」か「税抜価格」か
- 「1個あたりの価格」か「100gあたりの価格」か
- 「送料込み」か「送料別」か
- 「年利表示」か「月利表示」か
といった違いが挙げられます。
同じ商品であっても、価格の見せ方によって消費者の印象は大きく変わるのです。
Chioveanu & Zhou は、企業がこの価格フレームを戦略的に使い分けることで、消費者に価格比較を難しくさせ、競争を和らげられることを示しました。
消費者の混乱は戦略になる
消費者が混乱する原因には、主に2つのタイプがあります。
(1) フレームの差別化(Frame Differentiation)
→ 企業ごとに価格の表示方法が異なる場合(例:「1個○円」 vs 「100g○円」)
(2) フレームの複雑さ(Frame Complexity)
→ 両社ともに複雑な表示形式を使っている場合(例:本体価格+送料+手数料)
このような混乱が起こると、消費者は価格を正確に比較できなくなり、一部の消費者がランダムに商品を選ぶようになります。企業はこの現象を利用することで、価格弾力性を小さくできるので、価格競争を緩和させることができるのです。
3. フレームと価格を混ぜて使う戦略
企業は、価格だけでなくフレームも**混合戦略(ランダムに選ぶ)**で提示することで、次のような結果を得られます。
- 一部の消費者はしっかり比較して安い方を選ぶ
- 一部の消費者は混乱して、ランダムに選ぶ
- 結果として、企業は価格を完全に下げずとも利益を確保できる
このようにして、価格分散(さまざまな価格が市場に存在)とフレーム分散(表示方法もバラバラ)が生まれ、競争が緩和されるのです。
5. 実務への活用例
この理論は、以下のような業界・場面で活用が考えられます。
● 小売業
- セール時に価格の表示方法を「○%OFF」「1個買うと1個無料」などに切り替える
● サブスクリプションサービス
- 表示価格とは別に「初期費用」「管理費」「更新料」などを細かく分けて提示する
● ECサイト
- 商品本体価格・送料・オプション価格などを別々に表示することで比較を難しくする
このように、価格そのものではなく、「見せ方」を変えることで競争を和らげることが可能となります。
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