参考論文
Economides, N., 1989, “Desirability of Compatibility in the Absence of Network Externalities,” The American Economic Review, 79, 1165–1181.Sinitsyn, M. (2010). Choosing the Quality of the Fit Between Complementary Products.
はじめに
パッケージの容量は、価格競争に影響を与えます。他の記事で、1人分のパッケージ容量で競争する場合、複数人分のパッケージ容量で競争する場合よりも、理論的には価格競争が緩やかになることを確認しました。ここでは、1人用商品でも、時期によって顧客の好みが変化する場合、容量を大きくして競争してしまうと価格競争が激しくなるということを説明します。パッケージ量を多くすることは、複数の期の需要を束ねる時間的バンドルと対応しているからです。
ケース
2つの会社A.Bが、それぞれ異なった匂いの芳香剤を1つずつ出して競争しているとします。
2つの会社が、芳香剤の効き目が2ヶ月になるような容量にして競争した場合と、1ヶ月になるような容量にして競争した場合を考えます。
この時、2ヶ月効き目があるパッケージは、1ヶ月分の商品を2つ束ねた時間的バンドル と解釈することができます。
この時、各消費者の好みが各月で独立の時、あるいは負の相関がある時(ある月でAが好きな人は、次の期でBが好きになる傾向にある)時、2ヶ月の容量や効き目で競争すると、価格競争が激しくなります。つまり、消費者が今月はラベンダーがいいけど来月は柑橘系の芳香剤がいいというように、好みが時期によって変化する場合、効き目を長くして両社が競争すると価格競争が激しくなってしまいます。以下2つの理由があります。バンドル商品同士で競争したときに価格競争が激しくなることと、メカニズムは全く同じです。
理由①
各個人について、時間によって好みが独立の時、大数の法則の作用が働き、2ヶ月全体で見たら合計的にどちらでも良いという消費者が増えてしまいます。各期の好みの平均が中立に近づくという作用が働くのです。2つの独立な一様分布変数を足し合わせた時の分布が三角分布になり、中心部分の確率密度が大きくなる(中心に寄せられていく)現象と同じです。これにより、価格弾力性が高くなり価格競争が激しくなります。せっかく一か月では好みにばらつきがある場合でも、2ヶ月容量という形でバンドル化されると、バラツキが弱まってしまい(2か月の好みの平均が中心部分に寄せられていくため)差別化の効果が弱まってしまうのです。
理由②
また、2ヶ月分パッケージで競争する場合、価格を下げることで、2ヶ月分の需要を一度に競合他社から奪えるため、値下げのインセンティブが強くなる、というのが理由の二つ目です。値下げインセンティブが強くなると、価格競争が激しくなり、価格は下がっていきます。
このような二つの理由で、効き目を二か月にして競争すると、効き目が一か月の時と比べて価格競争が激しくなる可能性があります。
ただ、好みについて各期で正の相関がある時(ある期でAが好きな人は、次の期でも同じくらいのAを好む)場合には、効き目を2ヶ月にして競争しても価格競争は激しくなりません。
戦略的示唆
どの商品を選ぶかについて、時によってバラバラであったり、次の期には飽きて違うも商品を選んだりする場合には、効き目の期間を長くしたりパッケージ量を多くして競争すると、価格競争が激しくなってしまいます。好みが時期によって変わることは、飽きが生じる商材によく見られます。
容量や効き目の期間を決める際には、時期ごとの各消費者の好みの相関を踏まえて決定するべきです。もし消費者の好みに一貫性がない場合には、パッケージ量を多くして競争すると、価格競争が激しくなり利益が小さくなってしまいます。
この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。
コメント