参考論文
Hotz, V. J., & Xiao, M. (2006). Strategic Information Disclosure: The Case of Multi-Attribute Products with Heterogeneous Consumers. NBER Working Paper No. 11937. National Bureau of Economic Research.
はじめに
市場競争の中で、品質をどれほど高くするべきかということは重要な論点です。この記事では、価格競争の観点から、品質戦略について考察します。水平差別化と垂直差別化の両方で競う時に、どのようにしたら価格競争を緩和できるかということにフォーカスします。特に、消費者の所得分布に傾向がある場合に、いかにして価格競争を緩和できるか検討します。
ケース
市場で2つの会社AとBが水平的に競争しているとします。水平的な好みについて、A社の属性を好む人よりもB社の属性を好む人の方が高所得者が多いという仮定を置きます。例えば、街にレストランが2つあり、立地で水平差別化しているとします。顧客は、自分の家から近いレストランを好みます。この時、レストランAのある場所からBのある場所に行くにつれて、地価が高くなっていてそれに応じて住む人の所得も上がっている、というような状況を考えます。
このケースでは、「Aが品質を低くし、Bが品質を高くしている状態」において、価格競争が緩やかになり両社の利益が大きくなります。
反対に、「Aが品質を高くし、Bが品質を低くしている状態」や、両社の品質が同じくらい場合には、価格競争が激しくなってしまいます。
所得と水平的好みの相関が、価格競争にどのような影響を与えるのかについて研究している Hotz, V. J., & Xiao, M. (2006) の論文は、以上のような結論を出しています。
メカニズム
Aが品質を低くし、Bが品質を高くしている状態において、価格競争が緩やかになる理由を説明します。高所得な人は、高品質商品と低品質商品にそれぞれ払ってもよいと考える金額の差が大きいです。追加的な品質の高さへの支払い意欲が大きいということです。Bを水平的に好む人に高所得な傾向がある場合、彼らはBが同時に高品質であるため、ますますBを好むようになります。つまり、彼らの、Aに対する支払意思額とBに対する支払意思額の差が非常に大きくなります。
一方で、水平的にAを好む人は、仮定により相対的に所得が少ないです。所得の少ない人は、高品質に追加で払ってもよいと考える金額が少ないです。そのため、彼らは依然としてAを好むということになります。
このような論理より、両者に払ってもよいと考える金額の差を各消費者に聞いたときの、分布の分散が大きくなります。この分散が大きいと、価格を一単位下げた時に競合から奪える顧客数が少なくなるため、価格競争が緩和されるのです。
次に、Aが品質を高くし、Bが品質を低くしている状態では、価格競争が激しくなるということを説明します。
水平的にBのことが好きな人は、高品質であることに対しても価値を見出し、高額を払ってもよいと考えます。したがって、彼らにとってAとBの差が縮まり、どちらでもよくなってしまいます。また、水平的にAのことが好きな人は、高品質であることに対してあまり高い額を払ってもよいと考えません。つまり、Aが高品質だとしても、彼らにとってのAとBとの差はあまり広がらないことになります。以上より、両者に払ってもよいと考える金額の差を各消費者に聞いたときの、分布の分散が小さくなります。この分散が小さいと、価格を一単位下げた時に競合から奪える顧客数が多くなるため、価格競争が激しくなるのです。
つまり、高所得者に水平的に好まれている企業は、高品質サービスを提供し、相対的に低い所得層の人に水平的に好まれている企業は、低品質にすることによって、価格競争を抑止できる可能性があります。
ケース②
IphoneとAndoroid の競争を例にとって考えてみましょう。両社は水平的に差別化されています。そして、傾向としてIphoneの水平的属性を好むのは高所得者割合が多いと言えるでしょう。この時、サムスンとしては価格競争の観点からは以下の示唆が言えるでしょう。つまり、Andoroid としては、Appleよりも高品質な商品を出してしまうと、価格競争が激しくなり利益が小さくなる可能性があるということです。Andoroidは、Appleよりも低い品質の商品を出すことで価格競争が緩和される作用が発生するのです。
品質のシグナリング
Hotz, V. J., & Xiao, M. (2006)は、以上の議論を踏まえて、上のAのような企業は、価格競争の観点から、自身が高品質であることを主張しないことが合理的だとしています。Aが高品質であると消費者に思われたら、AとBの違いが少なくなって価格競争が激化してしまうからです。
まとめ
品質の高さをどうするべきかということは、経営戦略上非常に重要な論点です。水平的な好みと消費者の所得に相関がある場合、競争する企業は、この記事で述べたような品質のすみわけをすることで、価格競争を抑止することができるかもしれません。つまり、高所得者に水平的に好まれる企業は高品質戦略を、低所得者に好まれる企業は低品質戦略をとることで、消費者の支払意思の分散が大きくなり、価格競争の緩和が期待できるのです。
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