はじめに
テレビ放映産業は、広告枠を企業に売って儲ける広告収益モデルを採用しています。このような広告収益モデルの産業では、差別化(水平差別化)がされにくいということを説明します。
差別化のインセンティブ
一般的に企業は、自社商品を他社商品とどれくらい差別化するかを決定する際に、以下のようなジレンマに直面します。
①他社商品との差別化度を小さくする(他社商品に寄せる)ことで、顧客を増やすことができる
②他社商品との差別化度が小さい(似ていると)と価格競争が激しくなってしまう
というジレンマです。この2つの作用のバランスを鑑みて、企業は差別化度を決定すると言えます。
①よりも②の作用が大きく働く場合には、各企業は大きく差別化をするということになります。他社との差別化が重要とされるていますが、その目的は価格競争を回避することです。
広告収入産業と差別化
テレビ局などの広告収益モデルを採用する企業は、②の作用を考慮する必要がありません。なぜなら、コンテンツを販売することで利益を得ているわけではないからです。コンテンツの価格競争というものがそもそも存在しないのです。コンテンツに付随する広告枠を販売して収益をあげているのです。広告収益モデルで収益を増やすには、広告主を集める必要があり、広告主にとって魅力的にするにはコンテンツが多くの人に見られるようになる必要があります。コンテンツが多くの人に見られる場合、広告主が多くつくことになり広告収入を増やすことができます。つまり、①の視聴者を増やすインセンティブだけが強く働くようになります。
そのため、「競合の近くに寄せて、なるべく多くの人に閲覧されるようにしよう」と各社が考えるようになり、結果として各社のコンテンツは万人受けするものへと収束していきます。ホテリングの立地競争モデルと呼ばれる理論が示す通りです。
中位投票者モデル
中位投票者モデルと呼ばれる、選挙活動を説明する理論と同じメカニズムです。有権者の好みが一列に並べられるとき(例:左派〜右派)、各政党は選挙に勝つために「真ん中の意見」に寄せた政策を出す、という理論です。テレビ局の各局が、どれも万人受けするようなコンテンツを出す傾向にあると言われることがありますが、それはこの理論を用いて説明できます。
戦略への応用
一般的に経営戦略を考える際には、いかに競合他社と差別化するべきかということが大きな論点になります。価格競争を回避することが重要だからです。しかし、広告収益モデル業界の企業の経営戦略を考える際には、この論点は重要ではなくなります。なぜなら、差別化をする理由がとても小さいからです。差別化による価格競争緩和というメリットが全くない上に、差別化をする(競合他社からコンテンツの性質を遠ざけると)とむしろ視聴者が減ってしまい広告収入も減ってしまうからです。
広告収入だけでなく、コンテンツ販売も開始したら、価格競争を意識するようになり差別化し始めるかもしれません。それによって、テレビコンテンツの多様性が増すようになるでしょう。
まとめ
広告収入モデルを採用している企業は、一般的な商材とは、戦略の考え方を180°変える必要があります。差別化の目的の一つはコンテンツの価格競争の緩和ですが、広告収入モデルではそれを考慮する必要がなくなるからです。むしろ万人受けするような中庸なコンテンツを打ち出すのが最適な戦略である可能性があります。
この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。
コメント