株式会社エコノミクス&ストラテジー

企業合併と価格競争

参考論文

Levy, D. T., & Reitzes, J. D. (1992). Anticompetitive effects of mergers in markets with localized competition. The Journal of Law, Economics, and Organization, 8(2), 427–440


はじめに

競争する企業は、合併によって価格競争を緩和できる場合があります。特に、直接顧客を取り合っている「近い」企業間の合併は、より価格競争緩和効果が大きいです。一方でそのような近い企業同時の合併は独占禁止法上規制対象になることが多いです。

この記事では、直接顧客を取り合っているわけではない企業同士の合併も、価格競争の抑止につながるという理論を紹介します。価格競争を起こしてきそうな会社を監視し、報復の脅威を増大させる手段として、合併が有効になるからです。


ケース

ある市場に、A社とB社とC社の三つの企業があるとします。A社とB社、そしてB社とC社は、それぞれ隣接して直接顧客を取り合う競合であるとします。A社とC社は、直接顧客を取り合うわけではないとします。

簡単な例でいえば、一直線の道路上に、3つのクリーニング屋が並んで競争している状況 と同じです。

この時、直接競争しているわけではないA社とC社の合併は、市場の価格競争を抑止する作用を持ちます。直接客を取り合っているわけではない会社同士の合併は、競争に影響を与えなそうにも一見思えますが、以下のような論理で影響を与えます。

合併による監視の強化

A社とC社が合併することで、B社が仮に値下げしたときにそれを特定するスピードが速くなります。もし合併していない場合、A社とC社は情報共有できないため特定が遅れる可能性があるからです。値下げがすぐに特定されるとB社が予想する場合、B社の値下げインセンティブは小さくなります。

合併による報復の脅威の増大

共謀を逸脱したら他社によって将来的に報復が激しく行われる、ということを各社が予想して高価格が維持されるというのが、フォーク定理です。この報復には、公共財の性質があります。すなわち、自身は報復値下げをせずに他社が報復するのにフリーライドしようとするインセンティブが各社に生まれるのです。その結果、報復が弱いものになってしまう可能性があり、共謀からの逸脱の意欲を大きくしてしまいます。

A社とC社が合併することでそのようなフリーライド問題を解決し、もしB社が裏切ったら激しく報復値下げ攻撃が行われる、という恐怖を与えることができます。その結果B社の値下げインセンティブを小さくすることができるのです。

このような合併は、挟まれたB社が問題児企業である場合に特に有効です。つまり、B社が暗黙の共謀から逸脱しそうな企業であるとき、A社とC社の合併はB社の逸脱を抑止する手法として有効な場合があるのです。


まとめ

このように、直接顧客を取り合う関係ではない企業間の合併であっても、市場の価格競争を抑止できることがあります。そして、このような隣接しない企業同士の合併は、独占禁止法上問題になりにくいという優位性があります。

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