参考論文
Amelio, Andrea, and Sara Biancini. “Alternating Monopoly and Tacit Collusion.” Journal of Industrial Economics, vol. 58, no. 2, 2010, pp. 402-423.
Green, E. J., & Porter, R. H. (1984). Noncooperative collusion under imperfect price information. Econometrica, 52(1), 87–100
はじめに
一般的に、違法ではない産業間の価格の維持(暗黙の共謀)は、競合他社の価格を監視することで成り立ちます。もし値下げを見つけた場合、すぐに値下げで仕返しし続けるということを各々に予想させることで、価格を維持することができます。(フォーク定理)
他社の価格を直接把握するのが難しい場合は、自社の売上が減っていないかどうかを確認することで、他社が値下げ裏切りをしていないか確認することができます。自社の売上が下がり次第仕返し値下げが発生する、ということを各々に予想させることで、価格競争を予防できることがあります。ですが需要の不確実性が高い場合、自社の売上が減った際に、その原因が他社が裏切ったからなのか、それとも全体の需要が落ちたからなのかを特定することが難しくなります。そのため、他社の価格を把握できず需要の不確実性も大きい場合は、価格が維持されにくく価格競争が激しくなってしまうということになります。この記事では、このような状況においても、競争が過度に激しくならないような方法を提案します。それは、交代型独占戦略(Alternating Monopoly Strategy)というものです。
交代型独占戦略
交代型独占戦略とは、以下のような戦略です。つまり、割引や特売、新商品販売について、各社が交互に行うようにするというものです。例えば特売をする企業は、一定期間にわたって大きな市場シェアを享受し、その後競合他社が同様の割引を行うことを許容する、という競争方法です。独占状態を交互に繰り返すという企業間協調です。
分かりやすい例でいうと、空港の出口ではタクシーが待っていますが、その道路は一列で、同時に何台も通れなくなっています。これも交代型独占の一種です。
任天堂やソニーも、新商品を出すときは時期をずらして販売していると言われています。
この交代型独占戦略が、一般的な共謀よりも競争を緩和できるゆえんは、「価格を監視するよりも参入を監視する方が容易である」という性質からきています。例えば、競合他社の広告キャンペーンの監視は、価格情報の監視よりも観察可能です。つまり、広告キャンペーンの割り込みという形で、裏切りを簡単に見つけることができるのです。Alternating Monopoly and Tacit Collusion.という論文は、需要の不確実性が大きいほど、一般的な価格による価格共謀よりも、交代型独占戦略による共謀の方が、維持されやすくなるということを示しています。
まとめ
フォーク定理による価格の維持は、競合他社の価格の把握が難しく、需要の不確実性が大きい場合には、難しくなります。この時に有効なのが、交代型独占戦略です。販売促進活動等を、暗黙の了解で各企業で交互に行うという戦略です。他社の広告キャンペーンなどの販促活動の監視は、他社の価格を監視するよりも容易であり、裏切りを特定しやすいため、協力関係を維持しやすいのです。他社の価格の把握が難しく、需要の不確実性が大きい業界では、この交代型独占戦略を検討するのが良いかもしれません。
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