参考論文
Economides, N., 1989, “Desirability of Compatibility in the Absence of Network Externalities,” The American Economic Review, 79, 1165–1181.
Sinitsyn, M. (2010). Choosing the Quality of the Fit Between Complementary Products.
はじめに
ショッピングモールなどに行くと、複数の飲食店が出店するフードコートをよく目にされるかもしれません。普通のレストラン街との大きな違いは、複数人で来たときの自由度です。レストラン街では、グループで1つのお店に入る必要がありますが、フードコートなら、それぞれが自分の食べたいものを別々のお店で買って、同じテーブルで一緒に食事ができます。この顧客にとっての自由度が、出店している飲食店同士の価格競争を和らげるという理論を説明します。フードコート化することが、アンバンドリングと対応しているという点が重要なポイントです。
フードコート化とアンバンドリング
フードコートでは複数人の団体客であっても、それぞれが自分の食べたいものを別々のお店で買うことができます。この構図はアンバンドリングと同じです。
反対に、複数人で来た時に団体で1つの店に入らないといけないような一般的なレストラン街は、バンドリングと構図が同じということになります。
産業組織論の研究でよく知られた理論として以下のものがあります。
「バンドリング同士の競争は価格競争を激しくし両企業の利潤を低下させ、アンバンドリングして個別に競争すると価格競争が緩和され利潤が大きくなります。」この理論は以下の記事で説明しています。
これと同じ論理により、出店する各飲食店は、フードコートで競うことで、一般的なレストラン街の形態で競うよりも、理論的には価格競争は緩和されます。
理由は以下のように説明できます。各飲食店は、それぞれ水平差別化で競争しているとします。
理由①
もし一般的なレストラン街の業態の場合、団体客は飲食店を一つ選ばないといけません、この時、複数人であることによって、その団体客の好みの平均が中立に近づいてしまうという作用が発生します。2つの独立な一様分布変数を足し合わせた時の分布が三角分布になり、中心部分の確率密度が大きくなる(中心に寄せられていく)現象と同じです。どの飲食店でもよいという団体客の割合が高くなり、これにより価格弾力性が高くなって価格競争が激しくなります。
せっかく個々人では好みにバラツキがある場合でも、複数人間でバンドルされると、そのバラツキが弱まってしまい(団体単位での好みの平均が中心部分に寄せられていくため)差別化の効果が弱まってしまうのです。
一方で、フードコートの形態をとっている時には、個々人の好みのバラつきが作用するようになり、差別化の作用が強く働くようになります。
理由②
また、レストラン街の業態で競争する場合、価格を下げることで、団体客の構成人数分の需要を一気に他社飲食店から奪えるため、値下げのインセンティブが強くなる、というのが理由の二つ目です。値下げインセンティブが強くなると、価格競争が激しくなり、価格は下がります
以上のような2つの理由で、フードコートの業態で競争することで、各飲食店の価格競争が緩和されるようになります。団体客の個々人が、柔軟に好きなものを選べるようにすることで、価格競争を抑えられるのです。
フードコート化が価格競争を和らげるということについて直接書いている学術論文は知らないですが、
Economides, N., 1989, “Desirability of Compatibility in the Absence of Network Externalities,”という論文でのモデルに従うと、以上のように結論付けることができます
まとめ
複数人客が多い場合、フードコート業態にして競争することで、価格競争を緩和できるということを説明しました。このように、市場環境を操作することによって業態として価格競争を緩和し、win-winな関係を作ることができる場合があるのです。
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