参考論文
Economides, N., 1989, “Desirability of Compatibility in the Absence of Network Externalities,” The American Economic Review, 79, 1165–1181.
Sinitsyn, M. (2010). Choosing the Quality of the Fit Between Complementary Products.
はじめに
2つの企業が、2つの商品をめぐって競争しているとします。この二つの商品は、一緒に使われるような商品です。例えば、ゲーム機とゲームソフトなどです。この時、他社商品と互換性を持たせるべきか持たせないべきかという論点が発生します。この記事では、多くの場合、相互に互換性を持たせて競争したほうが、価格競争が緩和されるという理論を紹介します。
ケース
以下のような事例を考えます。2つのゲーム会社(A社とB社)が競争しているとします。2社はそれぞれ、ゲームのハード(ゲーム機)とソフト(ゲームソフト)を生産販売しているとします。この時、競合の商品と互換性を持たせるか否かというの重要な意思決定になります。互換性をそれぞれが持たせない場合は、A社のゲームソフトはA社のゲーム機でしかプレイできず、B社のゲームソフトはB社のゲーム機でしかプレイできないとします。それぞれ互換性を持たせる場合は、A社のゲームソフトをB社のゲーム機でプレイでき、逆もまたしかりだとします。
この時、消費者の、ゲーム機の好みとゲームソフトの好みが独立である場合(A社のゲーム機を好む人ほど、A(B)社のソフトが好きである、といったような傾向がない、好みについて独立な場合)
相互に他社商品と互換性を持たせて競争したほうが、価格競争が緩和され両社の利益が大きくなります。つまり、消費者が自由にソフトとハードを組み合わせれるようにしたほうが、価格競争が緩和されるのです。この結論は、著名な論文である、「Desirability of Compatibility in the Absence of Network Externalities」で述べられています。
メカニズム
相互に他社商品と互換性を持たせて競争したほうが価格競争が緩和される理由、逆を言えば互換性を持たせないときに価格競争が激化する理由を説明します。
(経済学に詳しい方向け:two-dimensional horizonal differentiation的に以下では考えています
理由①
互換性がない場合、消費者は、(A社ゲーム機+A社ゲームソフト)と、(B社ゲーム機+B社ゲームソフト)のどちらかを選択することになります。消費者の、ゲーム機の好みとゲームソフトの好みが独立である場合、大数の法則の作用が働き、A社パッケージとB社パッケージの価格が同じだったら、どちらでもよいという無差別な消費者の割合が相対的に多くなってしまいます。2つの独立な一様分布変数を足し合わせた時の分布が三角分布になり、中心部分の確率密度が多くなる(中心に寄せられていく)現象と原理は同じです。これにより、互換性なく競争した場合、価格弾力性が高くなり価格競争が激しくなってしまいます。これが理由の一つ目です。どちらの会社のゲーム機(ソフト)をどれほど好むかということについて、単品では消費者間でせっかくばらつきがあっても、パッケージ化してしまうとそのバラつきが弱まってしまうと言い換えることもできます。
理由②
理由の2つ目は以下の通りです。互換性なしで競争した場合、価格を下げることで、競合他社から一定数の消費者が乗り換えてきてきますが、その際その人数分のパッケージ全体の需要が増えるため、値下げのインセンティブが強くなります。反対に、互換性を持たせて競争したときは、ゲーム機価格を下げたところでゲームソフトの需要は増えない(パッケージ全体の需要が増えることがない)ため、値下げのインセンティブが比較的弱くなります。したがって、互換性がない時の方が、値下げ競争が激しくなり価格が下がるのです。
以上の二つの理由により、相互に互換性を持たせて競争したほうが、理論的には価格競争が緩和され両社の利益が大きくなることになります。
好みの相関と価格競争
上では、消費者のゲーム機の好みとゲームソフトの好みが独立であるという仮定を置いています。もし好みに正の相関がある場合(A社のゲーム機が好きな人ほどA社のソフトが好き、逆もしかりという場合)互換性を持たせなくても価格競争はそこまで激しくなりません。一方で、負の相関がある場合(A社のゲーム機が好きな人ほどB社のソフトが好きな傾向にある)は、互換性を持たせないと価格競争は非常に激しくなります。
まとめ
一般的には、他社商品と互換性を持たせて、消費者が自由に商品を組み合わせられるようにすることによって、価格競争を緩和させ利益を増やすことができるということを紹介しました。直感的には、競合との競争上、競合と互換性を持たせずに顧客を自社で囲い込む方がよさそうに思えますが、それをお互いがしてしまうと価格競争が激しくなって損してしまうのです。
この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。
コメント