参考論文
Coase, R. H. (1972). Durability and monopoly. Journal of Law and Economics, 15(1), 143–149
はじめに
耐久財を販売する際に、コースの仮説の作用が働き値段が下がってしまう可能性があることを述べました。それを防ぐための手段としてリース化を紹介しましたが、それ以外の手段をここでは紹介します。それは、過去遡及型最恵国待遇条項を買い手と結ぶ という方法です。
コースの仮説
コースの仮説とは以下のようなものです。ある耐久財が販売された時、消費者はそれを一度買うと長期間買う必要がなくなります。そのため販売開始から時間が経つと、支払い意欲の少ない消費者しか残らなくなります。この時、企業としては彼らから購入されるために低価格を付けることが合理的になります。このように将来価格が値下がりすることを消費者が予想すると、購入を先延ばしにするようになります。結果として企業は価格を下げざるを得ないのです。
過去遡及型最恵国待遇
売り手としては、このようなコースの仮説の出現を防ぐには、「売り手が購入を延期しようとしないこと」「売り手に将来価格が下がると予想させないこと」が重要です。このための手段として、過去遡及型最恵国待遇条項 というものを説明します。
過去遡及型最恵国待遇条項とは、ある買い手に「将来もっと安く売ったら、差額を返す」と約束する契約です。つまり、現在と将来を含めて、一番良い条件で取引をするということを、各顧客に約束をするという契約です。
この契約を結ぶことで買い手としては、もし将来価格が下がったとしても差額返金を受けるため購入を待つ必要がなくなります。そして、将来価格を下げないことをコミットメントする手段として、過去遡及型最恵国待遇条項は機能します。もし将来価格を下げると売り手は損することになるからです。
以上の理由から、過去遡及型最恵国待遇条項はコースの仮説の出現を防ぐのに機能します。複数の会社が競争する市場では、この条項を各社が顧客と結ぶことによって、市場全体の値下がりを予防することができるでしょう。
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