株式会社エコノミクス&ストラテジー

パッケージ容量と価格競争

参考論文

Economides, N., 1989, “Desirability of Compatibility in the Absence of Network Externalities,” The American Economic Review, 79, 1165–1181.
Sinitsyn, M. (2010). Choosing the Quality of the Fit Between Complementary Products.


はじめに

多くの人が、スーパーやコンビニの飲料コーナーで、同じ銘柄のお茶が500mlと1.5Lという異なるサイズで並んでいるのを目にしたことがあるはずです。一見すると、これらは単なる「選択肢」のように思えますが、パッケージの容量によって価格に与える影響は違います。

具体的には「個人向け容量」と「複数人向け容量」では、価格設定の基準や競争の激しさが大きく異なります。複数人向け容量の商品が、バンドル商品の要素を持っているということが鍵になります。

本記事では、コーラを例にとりながら、容量の違いが企業の価格競争戦略にどのような影響を与えているのかを読み解いていきます。


大容量パッケージの販売は価格競争を激しくする

コカ・コーラとペプシの競争を考えます。この二社の商品は水平差別化されています。両社が、家族や複数人向けの2ℓ容量を販売した時(1人で2ℓを飲み切る消費者は少ないでしょう)、500ml商品で競争する時よりも、理論的には価格競争が激しくなり1単位当たり価格は低下するはずです。

重要なのは、2ℓ商品は、複数人分のコーラのバンドル商品と解釈することができるということです。バンドル商品同士の競争が価格競争を激しくするということは他の記事で紹介しています。


メカニズム

なぜ複数人向けの大容量パッケージで競争すると価格競争が激しくなるのか(1単位当たりの価格が低下するのか)理由を以下で説明します。

理由①
購入するグループの好みが独立の時(兄がコカ・コーラを好きな時、弟がコカ・コーラ(ペプシ)を好む、などといった傾向が見られない)、大数の法則の作用が働き、グループの効用の合計的にどちらでも良いという家庭が増えてしまいます。グループの好みの平均が中立に近づくという作用が働くのです。2つの独立な一様分布変数を足し合わせた時の分布が三角分布になり、中心部分の確率密度が大きくなる(中心に寄せられていく)現象と同じです。これにより、価格弾力性が高くなり価格競争が激しくなります。
せっかく個々人では好みにばらつきがある場合でも、複数人向けの大容量パッケージという形でバンドル化されると、グループとしてそのバラツキが弱まってしまい(グループ単位での好みの平均が中心部分に寄せられていくため)差別化の効果が弱まってしまうのです。その結果、複数人で購買の意思決定をする時に、価格の低さが重視されがちになるのです。

理由②

また、大容量パッケージで競争する場合、価格を下げることで、複数人分の需要を一度に競合他社から奪えるため、値下げのインセンティブが強くなる、というのが理由の二つ目です。値下げインセンティブが強くなると、価格競争が激しくなり、価格は下がっていきます。


まとめ

複数人向けの大容量パッケージを出すことで好みの平均が平準化してしまい、値下げによるインパクトが大きくなります。大容量パッケージは、複数人の需要を束ねるバンドル商品の側面を持っているのです。両社は、500ml商品に絞り、各個人が自分の好きな方を選択できるようにしたほうが、価格競争を緩和し利益を大きくできるはずです。

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